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​もうすぐ農業を始めます。ー 研修生たちの声

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遠藤 裕作 

(研修期間:2024年3月~2025年2月)

 

なぜ研修を受けようと思ったのか

 研修を受ける前は東京で6年間会社勤めをしていました。2020年のコロナ禍になったあたりから、当時の生活や食になんとなく疑問や関心を抱くようになったこと、さらに妻が難病を患ったことがきっかけとなり、より食に関して考えるようになりました。元々いつかは田舎に移住したいと夫婦共々思っていたので、病気のこともあり、まずは仕事を辞めて移住しました。

 農業をやってみたいという気持ちはありましたが、親も親戚も非農家の私が農家になるなんて現実には難しそうだし、そもそもどうやったらなれるのだろうかと思っていました。やぎ農園ではパートナー制度があり、何度か農作業のお手伝いに参加させて頂く中で、農業への思いもふつふつと湧いてきて、「まずやってみないと何も分からない」と思い立ち研修を受けたいとお願いしました。

 

どんな研修内容か

 現代の農業は、どちらかと言えば大規模な農業を推進している方向にありますが、やぎ農園では、「自給すること」をベースにした昔ながらの丁寧なやり方を教わることが出来ます。

例えば田んぼでいうと、田植えの前には「くろぬり」と言って、田んぼに水を貯めるために畦に泥を塗りつけて水が抜けないようにする作業があります。これを、マンノウとクワをもって手作業で一枚一枚の田んぼを丁寧に行います。

 現代では、トラクターで行う農家が大半のようです。機械作業での作業の効率性には確かに敵わないと思いますが、その分手作業の方が水持ちは間違いなく良いみたいです。おかげで、素人の私や他の研修生たちがくろぬりした田も水が抜けることはありませんでした。また、大型機械を使うと確かに作業性はとても良いと思います。しかし私のようにたいした貯えもなく新規就農を目指す者にとって、大型機械(コンバインなど)には手が出せません。しかし前述したようなやり方や小型~中型機械を使うやり方であれば、経済的な面も含め新規就農を目指す私でも「やっていけるかも」と希望が持てました。

 栽培技術はもちろんですが、畑や田んぼを管理するということ、他の農家との関りなど、

農家として生活していく為に重要な心得も教えて頂きました。また、作業の合間や休憩時間にも疑問を質問したり、八木さんの苦労話なども聞いたりすることができて、そのような時間も大変有意義でした。そして1年間を通じて、農家の暮らしというものを経験することができます。

 

実際に研修を受けてみてどう感じたか

 自分の食べるものを自給する考えの有機農業は暮らしそのものだと実感しました。農薬、化学肥料を使わないことはもちろんですが、有機農業はそれ以外にも自分で作った作物を食べられることの幸福感や地域や消費者との関わり、環境保全、作物を作ることだけではない奥深さを知ることができました。

 例えば、稲を収穫した後天日干し乾燥させる際に使うのが、竹です。翌年以降に使う竹材を冬に伐る訳ですが、山の地主さんも高齢で竹林を整備しきれない訳です。そういった場所の竹を伐らせて頂き地主さんは整備されることをありがたいと思ってくれる。材料も地域の天然資源を使えるし、環境整備もされるのでいいことづくしです。そういった地域の方との関りや、そこにある資源を使うということも面白い所だと思いました。

 また、実際に農の現場で作業してみて、高齢化などによる離農が後を絶たない現状を知りました。このままいくと本当に農業をする人がどんどん居なくなってしまうということを研修中にも関わらず肌で感じました。これから農家が増えていくことが、食や地域を守ることになると思ったので、私もその一員だという自覚を持ってやっていきたいと思います。

 

今後やりたいこと

 稲作を生活の軸にし、まずは自分達の暮らしが安定して続けられるようにし、育てた作物を使ったお菓子などの加工品も販売したいです。また、農業や食に興味のある方に作業体験の場を設け、農業の大切さを知ってもらいたいと思います。

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遠藤 唯奈 

(研修期間:2024年3月~2025年2月)

 

農家を志したきっかけ

〈26歳の時に体調を崩し、自分自身の食や暮らしに向き合ったため〉

 病気の再発を繰り返す中で“西洋医学では根本的に治すことができない、薬を飲み続けなければいけない病気”と医師に診断され、しばらくの間は毎日服薬していました。ですが、「一生薬に頼り続ける生活で本当にいいのか、薬の副作用で新たな病気を引き起こしてしまうのではないか」と疑問を抱いたため、自力で治す方法を調べ実践することに。その中で、食の安全性や人間本来の自然に寄り添った暮らしについて関心を持つようになりました。農薬や化学肥料を使わないお米や野菜を食べ、自然豊かな土地で暮らしたいという想いが日に日に強くなり、夫婦で仕事を辞め憧れていた田舎暮らしを始めました。食を変え、生活を変え、生き方を変えるうちに、体調がどんどん良くなっていったのです。

 もともと家庭菜園が趣味だったのですが、できた野菜を収穫して食べることの喜びを知っていくにつれ、貸農園での小さい面積では物足りなくなっていました。また、保育士として働いている時から無農薬で作物を育てている農家さんにも興味を持っていたのですが、農家になるなんて不可能だと始めから諦めていました。

 ですが病気を経験し、一時的にですが生命の危機を感じてからは、「やりたいことをやらずに死んだら絶対後悔してしまう。自分のやりたいと思ったことは先延ばしにせず、やってみよう。」と思うようになりました。一度きりの人生、やりたいことをやろうとやぎ農園さんでの研修を受けることを決めました。

 

「やぎ農園」で研修を受けることを決めた理由

〈稼ぐ農業ではなく、暮らしの農業〉

 私の中で、農業は初期投資がかかるイメージがありました。親の代から農業をしているわけではないので、農業機械や資材なども一から自分たちで集めていくことになる、借金をして初期投資をしても成功するかも分からない…いわば賭けをするようなことはできないと思っていました。

 八木さんは、昔ながらの手仕事を行うことで、大型農業機械(コンバイン等)を使わずお米を作っていること、地域の資源を活かしながら農業を行っているということを知り、このやり方なら出費を抑えられ、自分たちも農業ができるかもしれないと希望が持てました。

 

〈「自給自足」を基盤としていること〉

 「自給の延長で直接つながっている方へおすそわけをする」という考えをHPで見た時に「私のやりたいことはこれだ!」と直感的に感じました。1つのものを多量に作る営農スタイルでは、収穫した作物を売ってお金を手に入れ、そのお金で自分たちの食べるものを買うことになります。

 私の場合は、お金を得るために働くのではなく、生きるため・暮らしそのものに直接つながることに手間暇をかけて生きていきたいと考えていたため、自分たちの食べるものは自分たちで作り、自給以上に収穫できた分をおすそわけするというやぎ農園さんの営農方法を学びたいと思いました。

 

研修を受けた感想

 田んぼの中等足場の悪い場での作業や体力仕事、初めて使う農具や農業機械の使い方等慣れないことの連続で、最初の頃は作業をすることで精一杯でした。ですが、少しずつ作業に慣てくると周りの自然が見えてきて、自然の中で農作業をできることが「幸せだなぁ」と思う余裕もでてくるようになりました。一生懸命に作業をした後に見る、三芳の夕日は最高です。

 八木さんご夫婦からは、お米・野菜作りに関してはもちろん、地域での暮らし方や農業の世界で今起きていること、有機農業の心得など、色々なことを教えて頂きました。お話を聞く中で、農業への不安な気持ちが農家になることへの期待に変わっていったのを覚えています。また、作業中も失敗を恐れていた私に対して「失敗したほうが覚えるからね」と優しい言葉をかけて下さり、様々なことに挑戦させてくださいました。作業をする中でお会いした地域の方々も優しく気さくに話しかけてくれ、地域の温かい雰囲気を感じたことも、この土地で農家になろうと決めた理由の一つです。

 そして、やぎ農園でとれたお米や野菜がとにかく美味しかったです。もともと嫌いな食べ物はなかったのですが、「この野菜ってこんなに美味しかったの?!」と野菜そのものの美味しさに驚く日々でした。取れたてのさやえんどうの甘さや、掘りたての里芋の柔らかさ…。思わず目をつぶりながら味わってしまいます。その裏での計り知れない努力が美味しさに繋がっているということも、改めて学ぶことができました。

 また、研修生の為に畑や田んぼを貸して頂き、やぎ農園で学んだことを実際に畑で実践できたことも深い学びの時間になりました。八木さんに手取り足取り教わりながら行うのと自分たちだけで行うのとは全く違い、時間も3倍以上はかかっていたと思います。ですが、そのおかげで新たな疑問が生まれ、栽培方法を細かく学ぶことができました。沢山の試行錯誤と失敗・収穫をすることができた、実りある時間となりました。

 地域の竹林では、来年から田んぼで使う為に沢山の竹を切らせてもらいました。竹を切ることで竹林が綺麗になっていくことも嬉しかったのですが、ご近所の方や竹林を所有している方に感謝の言葉をたくさん頂きました。お金をかけずに資材を手に入れることができ、地域の方々の竹林もきれいになる…素敵な循環だなと感じました。

 来年からは、いよいよ自分たちも農家になります。決して楽しいことばかりではない道のりになることは覚悟しつつ、苦労や挫折を含めて百姓人生を思い切り楽しもうと思っています。

私自身食べることが大好きなので、自分たちが自信をもって「美味しい!」と思える作物を作り届けられるような農家を目指します。また、地域の方・農家の先輩方や同じ志を持った仲間たち・お客さんとのご縁を大切にしていきたいです。

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佐藤やすこ 

(研修期間:2024年3月~2025年2月)

 私はこの1年間、フリーランスの仕事を続けながら農業研修を受けました。やぎ農園との出会いはパートナー制度です。ある日、ホームページの研修生募集の条件に「半農半X」の文字を見つけて熟読してみるも、「週3~5日、8時間」の条件は満たせそうにない。とはいえ、「あの時相談だけでもしてみればよかった」などと後悔したくないと思い、パートナーの作業に参加した時に、思い切って相談を切り出したのが事の始まりです。そして、どういう形なら仕事と研修を両立できるかを話し合い、平日は半日、週末は終日を基本として週4~5日、研修に参加することになりました。仕事の関係者の方々も私が研修を受けることを応援してくださり、業務において多大なる配慮をいただいたことも、とてもありがたく幸運なことでした。

 研修中、時期によっては毎日のように新しい作業があり、平日は半日しかいないため経験できなかった作業も少なくありません。それでも、私のスケジュールに最大限配慮していただいたおかげで、田んぼの作業を中心に、要となる作業については一通り経験することができました。

 元々、趣味で農作業をする機会は多くありましたが、仕事を辞めて農家になるというイメージは持てずにいました。そんな中、仕事を続けながら研修を受けられるというのはまたとないチャンスでした。研修を受けたことで、専業農家にはならずとも、仕事の一つとして、今後はこれまでより一歩踏み込んだ形で農に関わっていけるように思います。

 また、トラクターのような大型の機械を使うことは、私は当初、全く想定していませんでした。それでも、「とにかく講習に参加して、実際に使うかどうかは後で決めればいい」という八木さんの言葉に背中を押され、農水省が行っているトラクター講習に参加しました。結果的に、手押しの耕運機を操作するには、体格や腕力の面で自分には難しいと判断するに至り、春からの田んぼの作業ではトラクターをお借りして使用することにしました。自分が思ってもみなかった方向に可能性を広げていただいたことをとてもありがたく思います。

 1年間の研修を通して、作業の技術的な面のみならず、農業への向き合い方についても、たくさんの気づきと学びを得ることができました。2025年の春からは、田んぼ4反と畑6畝を耕作する予定です。研修を受けたのと同じ地域で農地を見つけていただいたので、師匠も研修生の同期も身近にいて、とても恵まれた環境です。初年度の目標はとにかく無事にお米の収穫までたどり着くこと。そして、自分と家族の自給率を高め、少しずつ販売につなげていくことが当面の目標です。

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松本伽羅(きゃら) 

(研修期間:2024年6月~2025年3月)

 私は、2024年の3月に東京の高校を卒業した後。千葉県南房総市に移住し、6月からやぎ農園さんの研修を受けています。4年前から家族で農業を始めました。移住する前は東京に住んでいたので、週末に南房総に通いで農作業をしていました。高校2年生の進路を決める段階で、そのまま進学するか農業の道に進むかの岐路に立ちましたが、幼い頃から自然の中に身を置く機会が多く自分のこれからの生き方に合うと思い、また今の農業の現状を実際に体感して若者がこれからの農業(一次産業)を担っていかなければ日本が衰退してしまうと思い、農業の道に進むことを決意しました。

 

研修を受けるきっかけ 

 私が八木さんの研修を受けようと思ったきっかけは、私が使い始めた特殊な田植え機が八木さんと同じだったことです。その田植え機を有機で20年以上も使っていて、かつ季節の野菜を有機栽培で学ぶことができるというから研修を受けることにしました。

 

研修を受けて

 研修を受けてみると、ほとんどが初めてのことばかりでとても新鮮で刺激的な学びになりました。各機械の操作方法、整備のやり方、堆肥作り、稲架掛けのやり方、南京縛りのやり方などなど数をあげれば限がないほど多くのことを教わりました。やはり、実際にプロから教わり実際に経験することは、本やSNSなどの情報媒体から知識を得るよりも遥かに良いということを改めて感じることが出来ました。

 また、どのようにして日々の農作業を効率良く行えるかということ、自分で考え工夫することの大切さも学びました。農作物の栽培方法や機械の操作などの農業に関する事だけでなく、農家として農村で生活する者としての在り方、生き方なども教わることができ、八木さんの研修で得た経験は一生の財産です。研修で得た知識経験をこれからの生活に活かしていきます。

 

研修後の展望

 研修を終えてからは、新規就農者として、八木さんとは地区が少し離れていますが同じ南房総市で就農するつもりです。主に、有機の稲作、季節の野菜を栽培していく予定です。

 現在の日本の衰退する農業(一次産業)をこれから担っていくのは今の若者だと思っています。だから、同じ若者として農業の素晴らしさ、価値を知って感じてもらい関心を持ってもらえるようにSNSなどを使って発信、活動していきたいと思っています。

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