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有機農業とは

 あなたは、有機農業とはどのような農業のことだと思いますか?一般には、「無農薬だったり有機質肥料で栽培するなどして作物に付加価値をつけるために営む農業」だと考えられているかもしれません。しかし、有機農業という言葉が使われるようになった1970年代から今日に至るまで、全国各地の先駆者の方々は、農薬や化学肥料を多用することへの疑問と弊害に気付いたからこそ、自らの農業の在り方を変える努力を積み重ねてきたのです。「付加価値をつける」ために転換したのではありません。そのようなつくりかたをされた農産物を求めるたくさんの消費者とのつながりが生まれ、直接のやり取りが広がっていったために、有機農業ということばも広まってゆきました。もともと、生産農家と者との信頼関係に基づいて生産物を直接届「産消提携」が主流でした。

 そんな時代の終わりごろに私は就農しました。それからまもなく「オーガニック」ということばがもてはやされるようになり、海外からの輸入有機農産物がお店に並ぶようになりました。有機食品についての国際基準が定められたからです。国内でもこれにならって基準が定められ、2001年4月からいわゆる「有機JAS法」により認証マークを付けたものだけが有機農産物としてお店に並べられる、という時代になりました。しかし、従来通りの信頼関係に基づく直接の取引は規制の対象外ということで、やぎ農園を含めて多くの農家が「産消提携」という形を続けています。

  わが家は2人とも有機農業の先達から学んで今日まで歩んできたので、有機農業という言葉を大事にしています。ここでいう有機農業について大切なことが3つあると、私たちは考えています。

 

◆すべての農地を同じように耕作すること。

特定の田畑だけ出荷用に無農薬にすることはしない。すべての作物は「商品」としてではなく「食べもの」として育てる。

◆自分たちの自給を基礎に据えること

自分たちの暮らしを離れて「商品」生産を主にすることはしない。

◆自分たちの農業や暮らしと社会との関わりを意識していること。

食・農・環境に関する政治の動きや社会問題に眼を向け、行動する。

 一口に無農薬・無化学肥料で栽培しているといっても、自然農法、自然農、自然栽培、オーガニックといったさまざまな言葉が使われていて、それぞれのこだわりや基準があるようです。何を大切にするかは人により違いますが、手にする農作物以外のことにも目を向けてみて、信頼し合える農家との付き合いを始めてください。

 私が衝撃を受けた出来事

 私が研修生として初めて三芳村生産グループの配送トラックに乗って野菜を届けに行った時のことです。野菜を降ろし終わって出発しようとした時、消費者グループの人たちが「ありがとうございました」と言って頭を下げたのです。これには衝撃を受けました。これまでは、物を売った側が、買ってくださった側にお礼を言うのが当たり前だと思っていたからです。農家と消費者が対等に信頼関係を築くという「産消提携」を象徴する出来事に、私は有機農業の大事な一面を学んだのです。

日本有機農業研究会について

 わが家の2人とも新規就農するに際して、さらに就農後も様々な見学会や講演会、大会などに参加してきました。貴重な情報や実践例を知り、全国の経験豊富な百姓や消費者の方々と交流することができる場です。多くの学びと刺激を受け、仲間をつくり、そして現在の暮らし方そのものを方向づけられました。1972年に発足した日本の有機農業運動の草分けというべき団体です。

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